孤高の御曹司は授かり妻を絶え間なく求め愛でる【財閥御曹司シリーズ黒凪家編】
「香苗さん、一瞬元気がなくなっちゃった気がしたけど、どうしたんだろう」
「子作りの関係でなにか悩んでおられるのかもしれませんね。跡継ぎ問題はシビアですから」

 どうやら沢木さんも香苗さんの異常を感じ取っていたらしい。子作りの話題を出したのも向こうからだし、確かになにか胸に秘めているものがあるのかも。

「瑛司様も会長の座を狙っていらっしゃると、各方面から噂を聞いています。奏飛様がご結婚されたとなればうかうかしていられませんから、香苗様がプレッシャーを感じていてもおかしくありませんよ」

 沢木さんの話を聞いて、パーティーでの一件を思い出す。藤堂さんたちが、『次期会長の座は瑛司さんに渡すでしょう』と言っていたっけ。

 お義父様がどう考えているかはわからないが、確か以前の勉強会で先にアッパーになったほうが優遇されると聞いた。

 瑛司さんが私を歓迎していないのもひしひしと伝わってくるけれど、それは私たちが先に子供を授かったら自分の昇任に支障が出るからなのだろうか。

「なんか……やっぱり嫌だね。階級を上げるために跡継ぎの子が必要だって承知して結婚したとはいえ、こんな風に考えちゃうのは。好きな人との子供を授かれたら、それだけで幸せなのに」
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