孤高の御曹司は授かり妻を絶え間なく求め愛でる【財閥御曹司シリーズ黒凪家編】

　奏飛さんの過去を知って、彼に恋してから、子供を作ることに対しての意識が少し変わってきた。もう階級を上げるための手段のようには思いたくない。

「……深春様も香苗様も、本来は悩む必要はないのですよ。いつどんな子を授かるかは、誰にも決められないのですから」

　眉を下げる私に、沢木さんは落ち着いた調子で声をかける。

「深春様はそのままでいいと思います。奏飛様を愛しているから子供を授かりたいという、その気持ちを大事にしていけばいいと」

　彼女は穏やかな表情でこちらに目を向け、私の心を軽くする言葉をくれた。

　考えが大人びていて、毒舌を吐くだけでなく実は温かい心も持っている彼女も、私が好きな人のひとりだ。

「そうだね。いつもありがとう、沢木さん」

　微笑んでお礼を言うと、彼女はふいっと前を向いてさっさと歩いていく。

「奏飛様との営みのために、念を入れてローションや大人のおもちゃをご用意しておいたことにも感謝していただきたいです」
「用意してたの!?　ていうか、いらないってば！」

　どぎまぎしながらツッコむと、沢木さんはちょっぴり楽しそうにしていた。きっとこれは、クールな彼女の照れ隠しなのだろう。