孤高の御曹司は授かり妻を絶え間なく求め愛でる【財閥御曹司シリーズ黒凪家編】
 歩くんが書いたと思われるそれに、一気に頭が混乱する。どうしてこんなメモを入れたのか理由がわからない。……もしかして、沢木さんに送るつもりだったのを間違えた?

 たぶんそうなんじゃないかな。でもこんな意味深なメッセージでは、奏飛さんが誤解するのも無理はない。

「奏飛さん、これはたぶん間違い──」
「それより、重要なのは君の気持ちだ」

 すぐさま返され、ぐっと言葉に詰まった。私に対してこんなに冷たい彼は初めてだ。

 奏飛さんはため息を吐き出してこちらに歩み寄り、私の隣に腰を下ろす。怒りや戸惑いが混ざった空気を全身に纏っているような彼に腕を掴まれ、身体が強張る。

 しかし彼の瞳には切なさも滲んでいて、私は目を見張った。

「そんなに歩と一緒にいたいのか?」
「っ、違います!」
「あいつだって男で、なにを考えているのかわからないっていうのに」
「そんなことな──っ」

 歩くんを庇おうとするのを阻止するかのごとく、荒々しく唇を塞がれた。口づけにいつものような甘さはなく、ただただ翻弄される。

 どうしよう、いつもの奏飛さんじゃない。この間から歩くんが絡むと怒らせてしまう。私と彼が背徳な関係になるとでも思われているんだろうか。

 呼吸が乱れて苦しくなるも、奏飛さんは強引に私のネグリジェをまくり上げて際どい場所に指を滑らせる。ビクッと身体が反応し、このまま流されてはいけないと理性を保つ。
< 166 / 257 >

この作品をシェア

pagetop