孤高の御曹司は授かり妻を絶え間なく求め愛でる【財閥御曹司シリーズ黒凪家編】
 最初は同情が多く占めていたと思う。俺とはまったく家庭環境は違うが、家族からの愛を与えられていない状況を幼い頃の自分も重ね合わせて、どうにか救ってやりたかったのだ。

 しかしこの時の俺は勝手で、自分にも利益がある結婚という方法しか彼女に提案することができなかった。

 ただ、深春を守ってやりたいと思ったのは確かだ。夫という立場を利用して、もう彼女に悲しい思いをさせないように。そうすることで過去の自分も救ってやれるような気がしていた。

 深春をホテルに送り届けた後、両親にすぐ連絡をして結婚したい人がいると報告した。

 それに驚愕したのは母だろう。秒速で弟たちにも伝わっており、翌日の夕方には実家に家族が勢ぞろいしていた。

 まず歩が信じられない!と言いたげな様子で声をかけてくる。

「奏飛兄ちゃんが結婚って……そんな相手がいたの!?」
「いや、昨日会ったばかりだ」
「見合いと同じようなものじゃありませんか」

 すぐさま瑛司がツッコんだ。これまで見合いを断ってきたのだから、そりゃツッコみたくもなるだろう。

「しかも鮫島建材の社長の姪御さんとは……。なぜ娘さんではなく姪御さんなのですか? 娘だとしても特に黒凪に利益はなさそうですが」
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