孤高の御曹司は授かり妻を絶え間なく求め愛でる【財閥御曹司シリーズ黒凪家編】
 瑛司の言う通り、財閥家の中には下の地位を見下す人もいる。それはもちろん承知しているし、どんな時も深春を守るのが夫となる俺の使命だと思っている。俺のせいで黒凪家の品位を下げたりもしない。

「黒凪家には迷惑がかからないようにするよ」
「いや、そうじゃなくてさ……」

 ぽりぽりと頭を掻いて煮え切らない様子の歩に首をかしげると、瑛司が真剣に代弁する。

「私たちは、兄さんもその彼女も、幸せになれるのかどうか心配しているんです。もっと慎重に見極めるべきでは?」

 俺がいい加減な気持ちで深春を選んだのだと言われているようで、少々眉根を寄せた。

 確かに決断するのはかなり早かったが、俺なりに彼女を大切にしたいと本気で思っている。でも、それは理解してもらえないかもしれない。

 歩も瑛司も、俺たちのような孤独を味わったことがないのだから。本当は俺だって深春と同じ、身分違いの人間なのだ。

「……お前たちにはわからないだろうな。俺がどんな気持ちで彼女を選んだのか」

 怒っているわけではなく、自分はふたりとは違うのだという寂しさを滲ませて呟いた。

 困ったような顔をして目を見合わせるふたりからは、ため息だけが聞こえた。

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