孤高の御曹司は授かり妻を絶え間なく求め愛でる【財閥御曹司シリーズ黒凪家編】
悪役は奴隷に成敗される?
 朝晩涼しくなってきた秋真っ盛りの十一月初旬、私は妊娠五カ月に入った。

 つわりはほぼなくなり、ご飯を美味しく食べられるありがたみをひしひしと感じる。赤ちゃんも順調で、エコーではだいぶ人間らしくなってきた姿を見られる。

 奏飛さんが検診についていったのは前回が初めてだった。最初はエコー写真もどう見ればいいのかいいのかわからず、戸惑う彼には笑ってしまったが、今はその存在を確かめられるだけで感動しているみたいだ。

 もうすぐ胎動も感じられるようになるらしい。日に日にわが子への愛情が大きくなっていて、自分にも母性というものがあったんだなと気づかされる。

 休日である今日は、奏飛さんが胎教だと称して自宅のピアノを弾いている。私はソファに座り、少し膨らんできたお腹を撫でながら聞き惚れていた。

 ピアノは彼が黒凪家に来た当時、最初に習わされたのだと聞いた。それまでストレスを発散させる方法を知らなかったため、初めて鍵盤に触れて音を鳴らした瞬間に〝これだ〟と感じたのだそう。

 以来、学生時代は主に勉強、今は仕事関係で悩んだ時に頭をスッキリさせるためのツールとしていたようだが、結婚してからは私が喜ぶからと弾いてくれる時が多くなった。
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