孤高の御曹司は授かり妻を絶え間なく求め愛でる【財閥御曹司シリーズ黒凪家編】
 数日後、私は翼さんのお店にやってきた。式に招待した時に『ぜひブライダルエステをやりにきて!』と言われ、すでに数回施術してもらっている。

 今日行っているのは背中のケアで、妊娠中でも快くOKしてくれたので嬉しい。ベッドに横向きに寝てすっかりリラックスしきっている私に、翼さんが楽しそうに話しかける。

「もうすぐだね~結婚式! 最初からふたりはくっつきそうな気がしてたけど、超スピード婚な上にもう愛の結晶まで授かったなんて信じらんない」

 彼女の言う通り、アブノーマルな結婚だったなと改めて思う。

「私も奏飛さんと会ってからの数カ月を思い返すと、かなり現実離れしているなと……」
「ほんとだよ。初対面でプロポーズするとか、あいつ頭おかしいだろ!って思ったよ」
「それに応じた私も私ですけど」

 苦笑を漏らすと、ざっくばらんな翼さんもおかしそうに笑った。彼女は背中をマッサージしながら、したり顔で言う。

「でも、選択は間違ってなかったでしょ。エステ必要ないんじゃないかってくらい、今の深春ちゃんは輝いてるもん」
「そう、ですかね?」

 照れてしまってそんな風にしか返せなかったけれど、選択は間違っていなかったと断言できる。天と地ほどの格差がある彼の求婚をよく受け入れたものだと、自分を褒めたいくらいだ。
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