孤高の御曹司は授かり妻を絶え間なく求め愛でる【財閥御曹司シリーズ黒凪家編】
「ずっと鮫島さんに脅されていたのか?」

 落ち着いたところで、表情を強張らせた奏飛さんがそう切り出したので、料理が冷めないうちにいただきながら打ち明ける。

 数日前に叔父から連絡が来て直接会ったことから始まり、彼の会社が倒産寸前らしいという話まで。

 耳を傾けていた奏飛さんは眉を下げて小さく頷き、責めるのではなく優しい口調で語りかける。

「そうか……ひとりで悩んでいたんだな。どうして俺に相談しなかった?」
「ごめんなさい。決して奏飛さんを頼りにしていないわけじゃないんです。ただ、守ってもらうばかりじゃきっと叔父にナメられるから。私はもう弱くないんだぞ!ってわからせてやりたくて」

 とはいえ相談はするべきだったかなと、少々決まりが悪くなって肩をすくめた。

 しかし、歩くんはむしろ感心したように笑う。

「深春ちゃん、よくやったと思うよ。叔父さんも懲らしめられたんじゃないかな。通話を録音してたのは僕もびっくりしたし」

 したり顔をする歩くんに続いて、ワイングラスを置いた瑛司さんも口を開く。

「私も、正直あなたを見くびっていました。嫁入りしてきた当初は、この家の決まりや階級制度にとても耐えらえるようには見えなかったので、逃げさせてやるのがあなたのためだと思ったんですが」
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