孤高の御曹司は授かり妻を絶え間なく求め愛でる【財閥御曹司シリーズ黒凪家編】
「え……『逃げさせてやる』?」
「ええ。兄さんに無理やり言いくるめられて結婚せざるを得なくなったのかもしれないし、離縁させてあげたほうがいいのではないかと」
彼の心の内を聞き、私も奏飛さんもぴくりと反応した。
瑛司さん自身が昇任するのに邪魔な存在だから、私を追い出そうとしていたんじゃなかったの?
「ずっと、瑛司さんは私が邪魔だから冷たくしているんだと思ってました」
「最初から『離婚したほうがあなたのためだ』と言っていたはずですが」
「た、確かに……」
そうだけど、わかりづらいですよ! 今も表情ひとつ変えないし、嫌われているんだと勘違いしても仕方ないのでは。
私は口の端を引きつらせるも、瑛司さんは伏し目がちになり、どこか憂いを帯びていく。
「私は、香苗が苦労しているのを見てきましたから。あなたはそれ以上につらくなるんじゃないかと思ったんです。なにせ相手が兄さんなので」
相変わらず妻想いの瑛司さんに感心していたのもつかの間、私の隣で奏飛さんがむすっとしているのに気づく。
「さっきから心外なんだが」
「人並みの恋愛をする兄さんなんて想像つかなかったので」
遠慮なくそう言った瑛司さんだったが、どこか決まりが悪そうに眼鏡を押し上げる。
「ええ。兄さんに無理やり言いくるめられて結婚せざるを得なくなったのかもしれないし、離縁させてあげたほうがいいのではないかと」
彼の心の内を聞き、私も奏飛さんもぴくりと反応した。
瑛司さん自身が昇任するのに邪魔な存在だから、私を追い出そうとしていたんじゃなかったの?
「ずっと、瑛司さんは私が邪魔だから冷たくしているんだと思ってました」
「最初から『離婚したほうがあなたのためだ』と言っていたはずですが」
「た、確かに……」
そうだけど、わかりづらいですよ! 今も表情ひとつ変えないし、嫌われているんだと勘違いしても仕方ないのでは。
私は口の端を引きつらせるも、瑛司さんは伏し目がちになり、どこか憂いを帯びていく。
「私は、香苗が苦労しているのを見てきましたから。あなたはそれ以上につらくなるんじゃないかと思ったんです。なにせ相手が兄さんなので」
相変わらず妻想いの瑛司さんに感心していたのもつかの間、私の隣で奏飛さんがむすっとしているのに気づく。
「さっきから心外なんだが」
「人並みの恋愛をする兄さんなんて想像つかなかったので」
遠慮なくそう言った瑛司さんだったが、どこか決まりが悪そうに眼鏡を押し上げる。