孤高の御曹司は授かり妻を絶え間なく求め愛でる【財閥御曹司シリーズ黒凪家編】

　悶えそうになっている私はさておき、瑛司さんが懐かしそうな顔をして口を開く。

「……俺は兄が欲しかったから、兄さんが来た時は結構嬉しかったんだ。もっと普通に遊んだり、勉強を教えてもらったりしたかったよ、あの頃は」

　敬語をやめて本心を吐露する彼を、奏飛さんはまっすぐ見つめていた。瑛司さんに続いて、歩くんも温かく微笑みかける。

「僕にとっても、奏飛兄ちゃんは正真正銘の兄貴だから。出世とか階級とか、なんにも関係ないよ」

　ふたりの言葉が、奏飛さんにとってどれだけ嬉しいものか。自分と重なって〝よかったね〟と思うと同時に、瞳に熱いものが込み上げた。

「……愚かだな、俺は。ずっと前から〝家族〟だったのに、気づきもしないで」

　まつ毛を伏せる奏飛さんだが、とても穏やかで幸せな感情が溢れているように見えた。

　彼はすぐに目線を上げ、凛とした表情で弟たちを見つめる。

「ふたりとちゃんと話をしたい。今からでも遅くないか？」

　彼の問いかけに瑛司さんはふっと口角を上げ、歩くんは「ギリ大丈夫」と茶化して笑った。


　それから三人は、食事を終えた後もしばらく話をしていた。階級制度から学生時代のことまで、腹を割って話す姿がとても微笑ましかった。

　ベッドに入って、いつものように抱き合って眠る時も、奏飛さんは満たされた様子だった。普段から優しい顔をする時がすごく増えたし、心穏やかに生きられるようになったなら私も嬉しい。

　家族って本当に難しいけれど、私たちならきっと大丈夫。丸みを帯びたお腹に手を当て、私も幸せな気分で眠りについた。