孤高の御曹司は授かり妻を絶え間なく求め愛でる【財閥御曹司シリーズ黒凪家編】
 躊躇していた時、お店のドアが開いて芸能人かと思うほどスタイル抜群の美女が出てきた。

 続いて現れたのは、ふんわりしたショートカットの人物。すらりとした女性に見えるが、パンツスタイルなので綺麗な男性のようにも思える。

「ありがとうございました。またのお越しをお待ちしております」

 去っていく美女に、声も中世的なその人がうやうやしく頭を下げた。姿勢を戻した直後、黒凪さんを見て目を丸くし、後ずさりする勢いで驚きを露わにする。

「奏飛! なにしに来た!?」
「売り上げに貢献しに来たんだよ。この子を磨き上げてやってほしい」
「いや、急に来られても。うちは完全予約制だって──」
「二割増しで色つけるから」
「まいどー!」

 ふたりは砕けた調子で話していて、親しいのが見て取れる。黒凪さんは次いで彼女(彼?)を手で示し、私に紹介してくれる。

「高校の同級生で、店長の(つばさ)。ちなみに女性だ」
「ちなみにって」

 軽くツッコむ翼さんに、やっぱり女性だったと少々ほっとする私。彼女は私に「よろしく~」と笑いかけ、毛穴の見当たらない美しい小顔をずいっと近づける。

「へえ、あんたの周りにいる女と全然違うタイプの子だね」
「貴重だろう。大切に扱ってくれ」
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