孤高の御曹司は授かり妻を絶え間なく求め愛でる【財閥御曹司シリーズ黒凪家編】
 軽く事情を話して先にシャワーを浴びせてもらい、カウンセリングをした後、おまかせのコースで一時間施術してもらった。

 海や温泉以外で他人に無防備な身体をさらすのも初めてだったので緊張したけれど、そのうち気持ちよさのほうが勝って、最後にはうとうとしそうなほどリラックスしていた。

 翼さんは予約のお客様がいたようで、私を担当してくれたエステティシャンはまた別の綺麗な女性だった。その方から聞いた話では、翼さんの腕前は芸能人にも人気で、お忍びで通う人がたくさんいるのだそう。

 中世的なルックスから、単純に翼さんに会いたがるファンも多いらしい。激しく納得する。

 そんな彼女は、施術が終わった私を個室のメイクルームに案内してくれた。翼さん直々にハーブティーまで淹れてもらえるのは、おそらく黒凪さんの紹介だからだろう。

 お姫様の部屋にありそうなおしゃれなドレッサーに座らされ、鏡越しに翼さんが話しかける。

「どうだった? 初エステ」
「すっごく気持ちよかったです……! なんか身体が軽くなった気が」
「よかった。今度は私が施術してあげたいな」

 彼女はそう言うと、たくさんの道具が入ったメイクボックスを取り出し、生き生きとした顔でこちらを振り返る。
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