孤高の御曹司は授かり妻を絶え間なく求め愛でる【財閥御曹司シリーズ黒凪家編】

『君がきちんと話しても、彼らは本気にせず話し合いにならないかもしれない。かと言って、俺がいたら本性を現さないだろうから……盗み聞きするか』

　穏やかじゃないひと言にちょっぴりギョッとしたけれど、彼が考えたのは陰で私が話す様子を窺い、見かねる状況になったら助けに入るというもの。彼の予想通りの展開になってしまったわけだ。

　黒凪さんは私の隣に歩み寄ると、叔父たちを見るその表情に嫌悪感を露わにする。

「あなた方の驕慢(きょうまん)な態度は目に余りますね。これまでもずっと深春さんに心ない言葉をぶつけていたのですか？」
「い、いやっ、そんなことは……」

　青ざめた顔でたじたじの叔父に、黒凪さんは「少し事情をお聞きしました」と明かし、口調を厳しいものに変える。

「確かにあなた方は、深春さんとは望んで暮らしていたわけではないのでしょう。それでも彼女は、押し付けられた家事や面倒事を鮫島家のために文句なくこなしてきた。彼女に罵詈雑言ではなく、労いや感謝の言葉をかけることはできないのですか」

　毅然と非難する彼に、三人は返す言葉を失くして黙り込んだ。そこで私もはたと気づく。