孤高の御曹司は授かり妻を絶え間なく求め愛でる【財閥御曹司シリーズ黒凪家編】
明るい声で伝えると、黒凪さんは優しい瞳でしばし私を見下ろす。
「俺の名前、覚えてる?」
次いで返ってきたのはそんな問いかけで、私はキョトンとしつつ頷く。名刺に書いてあったし、翼さんが何度も口にしていたから。
「はい。えっと、奏飛、さん……」
なんとなく名前を呼ぶのが気恥ずかしくて、ぎこちなくなってしまった。しかし、彼の表情はどことなく満足げだ。
「これからはそう呼んでくれ。君も黒凪になるんだから」
「あ、そっか。そうですね」
当たり前のことを忘れていて、私はへらっと口元を緩めた。まだまだ実感が湧かないけれど、私も同じ苗字になるのだと思うとちょっぴりくすぐったい。
練習がてら、もう一度「奏飛さん」と口にしてみる。今度はちゃんと言えたのでにこりと微笑むと、私を映す彼の表情もほころんだ。
ふいに彼の手がこちらに伸びてきて、私の頭にぽんと載せられる。
「おやすみ。深春」
髪を撫でられながらそう呼ばれただけで、胸がときめいた。一気に親密感が増したように感じる。
私も「おやすみなさい」と返し、彼は部屋を出ていく。ひとりになると、心にはなんとも言えない寂しさと、けれどぽかぽかとしたものが入り混じっていた。
「俺の名前、覚えてる?」
次いで返ってきたのはそんな問いかけで、私はキョトンとしつつ頷く。名刺に書いてあったし、翼さんが何度も口にしていたから。
「はい。えっと、奏飛、さん……」
なんとなく名前を呼ぶのが気恥ずかしくて、ぎこちなくなってしまった。しかし、彼の表情はどことなく満足げだ。
「これからはそう呼んでくれ。君も黒凪になるんだから」
「あ、そっか。そうですね」
当たり前のことを忘れていて、私はへらっと口元を緩めた。まだまだ実感が湧かないけれど、私も同じ苗字になるのだと思うとちょっぴりくすぐったい。
練習がてら、もう一度「奏飛さん」と口にしてみる。今度はちゃんと言えたのでにこりと微笑むと、私を映す彼の表情もほころんだ。
ふいに彼の手がこちらに伸びてきて、私の頭にぽんと載せられる。
「おやすみ。深春」
髪を撫でられながらそう呼ばれただけで、胸がときめいた。一気に親密感が増したように感じる。
私も「おやすみなさい」と返し、彼は部屋を出ていく。ひとりになると、心にはなんとも言えない寂しさと、けれどぽかぽかとしたものが入り混じっていた。