孤高の御曹司は授かり妻を絶え間なく求め愛でる【財閥御曹司シリーズ黒凪家編】
「じゃあ、今夜必ず……というわけではないんですね」
「ああ。だがさっきも言った通り、早いに越したことはない。どちらかに問題がある可能性もあるからな」

 確かに、妊娠できるかどうかは行為をしてみなければわからない。もし不妊症だったりしたら病院に通わなければいけないだろうし、その分時間もかかる。

 身体を重ねる日はきっとすぐなんだろう。でも彼は、『徐々に慣らしていこう』と言ってくれた。それだけで不安は薄れていく。

 奏飛さんは再び私の頬に手を添え、情熱を孕んだ瞳で見つめる。

「まずはキスからだ。唇だけなら、俺を受け入れられるか?」

 律儀に問いかける彼に、怖さは感じない。胸を高鳴らせつつこくりと頷くと、美しい顔がゆっくりと近づいてくる。

 まつ毛を伏せた直後、唇に柔らかなそれが触れた。初めての感覚に、息が止まる。

 少し離れて、またくっついて。想像以上に優しくて甘い触れ合いとは逆に、心臓が激しく動いて苦しい。

 完全に唇が離された途端、水から上がったかのごとく肩で息をすると、奏飛さんはクスッと笑う。ちょっぴり面白がるように「今度は息を止めないでごらん」と言い、もう一度唇を重ねた。
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