孤高の御曹司は授かり妻を絶え間なく求め愛でる【財閥御曹司シリーズ黒凪家編】
イギリス製のクラシックな高級車に乗り込み、ようやく人心地がついた。私はシートにもたれて脱力するも、佛さんはどこか晴れ晴れとした様子だ。
「奥様の意地悪な仕打ちを嫌な顔ひとつせず、完璧にこなす方は初めて見ました。お嫁さんだけでなく、邪な思いを抱いて黒凪家に近づくお客様にも容赦がないので」
「そうなんですね。今回はたまたま私にできることだったからですよ」
それに、鮫島家での扱いに比べたらなんのその。軽く笑う私に、佛さんは運転しながら弁解するように言う。
「ですが、奥様も根っからの意地悪ではないのですよ。黒凪家とご子息方を守らなければというお気持ちが強く、少々行き過ぎてしまわれる時があるのです」
私も、外へ追いやったわりに熱中症を心配してやってきたり、素直に『綺麗!』と褒めたりする彼女は、憎めない人だなと感じる。思い返して含み笑いしつつ、「なんとなくわかります」と返した。
黒凪家の敷地を出た車は、オレンジがかってきた街を優雅に走っていく。
「明日は奥様には呼ばれていらっしゃらないようですね。鮫島様のお宅にお荷物を取りに行くよう奏飛様から仰せつかっておりますので、深春様のご都合がよろしければ参りましょうか」
「奥様の意地悪な仕打ちを嫌な顔ひとつせず、完璧にこなす方は初めて見ました。お嫁さんだけでなく、邪な思いを抱いて黒凪家に近づくお客様にも容赦がないので」
「そうなんですね。今回はたまたま私にできることだったからですよ」
それに、鮫島家での扱いに比べたらなんのその。軽く笑う私に、佛さんは運転しながら弁解するように言う。
「ですが、奥様も根っからの意地悪ではないのですよ。黒凪家とご子息方を守らなければというお気持ちが強く、少々行き過ぎてしまわれる時があるのです」
私も、外へ追いやったわりに熱中症を心配してやってきたり、素直に『綺麗!』と褒めたりする彼女は、憎めない人だなと感じる。思い返して含み笑いしつつ、「なんとなくわかります」と返した。
黒凪家の敷地を出た車は、オレンジがかってきた街を優雅に走っていく。
「明日は奥様には呼ばれていらっしゃらないようですね。鮫島様のお宅にお荷物を取りに行くよう奏飛様から仰せつかっておりますので、深春様のご都合がよろしければ参りましょうか」