転生(未遂)秘書は恋人も兼任いたします
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───一体、何が起きているのだろう。
実家でのんびりと過ごしたあと、母から貰ったアップルパイを片手に仕事の日の帰宅時間に合わせてマンションに帰れば、そこには既に逸生さんの姿があった。
何故か玄関で私を待ち構えていた彼は、口を開くなり怒りを孕んだ声で問い詰めてくる。その表情には焦りも見えて、珍しく取り乱している彼に思わず目を見張った。
もしかして、勝手に仕事を休んだことを怒ってる?秘書が行き先も告げずに行動するのは、まずかっただろうか。
でも私も一応連絡を入れようとした。だけど何故か逸生さんのスマホの電源が切れていて、連絡がつかなかったのだ。
逸生さんが午後からどこで何をしていたのか知らないけれど、電源を切っていた逸生さんにも落ち度があるのでは?なんて思ったの束の間。彼からの鬼のような不在着信と「心配した」の一言で、自分の軽率な行動を後悔した。
いつも飄々としている逸生さんの口調には余裕を感じない。それだけ私を心配してくれていたのだと思う。
不安げに瞳を揺らした彼を見て、深く反省していた矢先。突如腕を引かれたと思ったら、いつの間にか逸生さんの腕の中にいた。