転生(未遂)秘書は恋人も兼任いたします

「松陰寺専務からのプレゼントなら、どんなものでも喜ぶと思いますよ」


私は今、どんな顔してる?いつものように無表情を貫けているのだろうか。


「ありがとうございます。そう言っていただけると、自信が湧いてきます。今夜、頑張ってみますね」


そう言って破顔する彼女を直視出来なかった。軽く会釈した私は、そのまま応接室を出た。







“ごめん、急遽会食(・・)が入った。今日は夕飯はいらないから”

“承知しました”

“あと…もしかしたら今日は帰れないかも。先に寝てて”

“…はい。お気をつけて”









「……あれ、もうこんな時間だ」


いつも彼が座っているソファに両膝を抱えて座りながら夜景を見ていたら、いつの間にか23時を回っていた。

松陰寺さんと会話してからの記憶が、ほとんどない。あれからひたすらぼんやりしていたら、あっという間に定時がきて、逸生さんは会食(・・)があるからと、ひとりでこの部屋に帰ってきた。

それからずっとやる気が起きなくて、とりあえずお風呂には入ったけれど、気付けばこの時間。


ご飯、食べ忘れちゃった。まぁ食欲もないし、食べなくていっか。

はぁ、と小さく溜息をついた私は、ふとスマホの画面に視線を落とした。


──逸生さんからの連絡は…ない、か。


帰らないってことは、そういうことだよね。今夜はふたりでどこかに泊まるのかな。

ていうか、会食(・・)ってなんなの。松陰寺さんとデートだって、隠さず言ってくれたらいいのに。

< 136 / 324 >

この作品をシェア

pagetop