転生(未遂)秘書は恋人も兼任いたします
「こう見えてドMなんすよね。だから岬さんみたいなSっ気ある人がタイプで」
「……」
「もちろん顔もタイプだけど、今日1日一緒にいてそのツンツンした感じがやっぱいいなって思ったし、なんなら突き放されれば放されるほど燃えるというか」
「申し訳ないですけど、私はドMの男性はタイプではありません」
彼の言葉を遮ってピシャリと言い切れば、坂本さんは「ほんと躊躇ないっすね」と力なく零す。
「せっかく酒の力を借りたんだけどなーやっぱダメか」
そして溜息混じりにそう呟くと、くたりとその場に座り込んだ。坂本さんに合わせて私もしゃがみこむと、虚ろな目が私を捉える。
「坂本さん、あなた何か勘違いしているみたいだからハッキリ言いますけど…」
「…勘違い?」
「実は私もドMなんです」
「……えっ、嘘だろ」
彼の目が、これでもかというくらい大きく開いた。恐らく、今日1番のリアクションだと思う。
「あなたと同じで私もよくドSだと勘違いされますが、実際はドMです。だからドMの男性は眼中にありません」
「……信じられねえ…」
「電柱に頭から突っ込んでいくくらいにはドMであると自覚してます」
「それは変態の領域っすね」
さらりと失礼なことを言ってのける彼は、小さく溜息を吐いたかと思えば、続けて口を開く。
「だったら、なんで専務なんすか」
そして彼の口から出た言葉に、耳を疑った。