転生(未遂)秘書は恋人も兼任いたします
11.知りたい
「あ、岬さん今いいすか」
「はい、何でしょう」
「よかったらコーヒーどうぞ。さっき岬さんの分も買ってきたんです」
「ありがとうございます。ちょうど飲み物を買いに行こうとしていました」
休憩時間、席を立とうとしていた私のところにやってきた坂本さんは「ナイスタイミングっすね」と缶コーヒーを差し出してくる。
「俺のは?」
「あ、すみません。専務の分はないです」
「へえーーーーーーーー」
自席から物凄い勢いで私達に近付いてきた逸生さんは、顔を引き攣らせながら「別にいらねえけどな?」と坂本さんに笑顔を向ける。その笑顔はどう見ても目が笑っていないけれど、坂本さんはそれに動じることなく「てか今度ランチ行きません?」と私に尋ねてきた。
「もちろん俺も一緒にだよな?」
「あ、いえ。出来れば岬さんとふたりで…」
「だめ。却下。こいつは俺の秘書だから俺の隣にいないとダメなんだよ」
「私も坂本さんとふたりの方がいいです」
「なんでだよ」
あの展示会に行った日から、坂本さんはこうしてよく私のところに会いに来てくれるようになった。なぜか坂本さんに厳しい逸生さんは、こうしていちいちつっかかてくるけれど。お互い秘密を握り合っている私と坂本さんは、とても良い友達関係を築けていると思う。
彼には逸生さんへの気持ちもバレているし、お互い似ているところがあるからか坂本さんといるのはシンプルに楽しい。だから逸生さんと三人で食事に行くより、ふたりで出かけた方が気が楽なのだ。
けれど、私がはっきりと断ってしまったからか逸生さんは分かりやすく肩を落とし、少し離れたところにいる小山さんのところへ行ってしまった。
なんだか申し訳ないことしちゃったかも。