転生(未遂)秘書は恋人も兼任いたします
「じいちゃん、これ。稲葉さんからじいちゃんに」
「わ、稲葉の饅頭じゃないか!ラッキー。あとでゲートボール仲間といただこう」
嬉しそうにお饅頭を受け取った会長は「てか逸生は稲葉さんに会いに行ってたのか?お前ほんと良い子だな」と目尻に皺を作る。
すると逸生さんは褒められて嬉しかったのか、照れくさそうに「まぁな」と目を細めた。
この人が本当に会長なの?と信じられない気持ちでいたけれど、ふたりのやり取りを見てすぐに納得出来た。
だって、稲葉さんといた時とはまた違う。逸生さんが心から気を許しているのが伝わってくる。
逸生さんの方が背は高いのに、何だか幼く見えるし、会長の逸生さんを見る目がとても優しい。
それに、何となく顔も似ている気がする。笑顔が特に。
「ばーちゃんから“年寄りなんだから大人しくしとけ”って伝言預かってきたぞ」
「腰が曲がった年寄りに言われたくねえなあ。わしはまだ自転車に乗れるぞ」
「頭ツルツルのじじいにも言われたくないと思うけどな。てかサンバイザーじゃなくて帽子被れよ」
「なんで?こっちの方がオシャレだろ?」
「うーん、頭寒そう」
「誰がカッパだよ!」
「そこまで言ってねーよ」
会話のキャッチボールも息がピッタリだ。孫と祖父を通り越して、何だか親友みたい。