転生(未遂)秘書は恋人も兼任いたします
「じいちゃん、めちゃくちゃ元気だったろ」
「はい、生き生きとしていてとても若く見えました」
逸生さんもあんなおじいさんになるのかな。ちょっと想像出来るから面白い。
逸生さんと一緒に歳を取れたら、幸せなんだろうな。毎日が楽しそうだもん。
「会長も稲葉さんも、とても良い人なのが滲み出ていました。逸生さんの周りには素敵な人達がいっぱいいますね」
「うん、俺もそう思う。周りの皆がいなかったら俺の人生腐ってただろうな」
荒れていた頃の自分や、両親のことを思い浮かべているのだろうか。自嘲気味に笑う彼を見て、私の髪に触れるその手を思わず握りたくなった。
「今日は逸生さんの新しい一面を見ることが出来て嬉しかったです。会長や稲葉さんの前だと、逸生さんが少し幼く見えました」
「嘘だろ。なんか恥ずかしいんだけど」
「本当ですよ。ちょっと子供っぽくなるというか、無邪気な感じが可愛かったです。とても楽しそうだったので、見ている私まで幸せな気持ちになりました」
「それ褒められてんのかよく分かんねえな」
さすがに“可愛い”は失礼だっただろうか。でも私は、今日の逸生さんも好きだけどな。
「紗良は?」
「…え?」
「紗良は俺に新しい一面、見せてくれないんだ?」