転生(未遂)秘書は恋人も兼任いたします


「そうね、九条にとっても白鳥と一緒になるしか道はないと思うわよ。だって私の兄も、あの男に殴られた被害者なんだもの。九条は白鳥を完全には切り捨てられない。大きな借りがある」

「ほんと、馬鹿な息子ですよね。殴った事実は消せないですから」

「でも、兄には申し訳ないけど今となっては殴ってくれてありがとうだわ」

「それにしてとあの態度、ほんと生意気ですね。これだから不良は…親の顔が見てみたいものです」

「その親…社長も、そして副社長も。無愛想な男で、あまり好かないわ。金持ちじゃなければこっちから願い下げよ」


逸生さんが、白鳥さんのお兄さんを?何かの間違いではないのだろうか。

稲葉さん曰く、昔の逸生さんは常にムスッとしていたらしいけど、会長にお饅頭を買ってあげるような、心が優しい人だ。

今なんて、荒れていた過去を感じさせないくらい温厚で、周りの人にも好かれてる。

それなのに、この人達の口から出てくる逸生さんはまるで別人。もし本当に殴ったことがあったとしても、何か特別な理由があったに違いない。

だって、九条の社内で平然とこんな話をする白鳥さんは、どう考えたってまともじゃない。そんな人の兄だもん。白鳥兄も、絶対頭がイカれてると思う。


ダメだ、考えれば考えるほど腹が立ってくる。今すぐこのドアを開けて、この熱々のお茶を頭からぶっかけてやりたい。

でも今私がそれをしてしまうと、また白鳥に借りを作ることになる。

悔しい。逸生さんの苦労も知らないで、どうしてそんな事が言えるの。

逸生さんが婚約するのは嫌だけど、それで彼が幸せになれるならいいと思ってた。でも私は、この女が彼と結婚するのだけは、絶対に嫌だ。

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