転生(未遂)秘書は恋人も兼任いたします
14.あふれる


「岬さんってお酒飲めるんだ」

「飲めますけど、強いわけではないですよ。焼酎や日本酒は飲めません。ジーマが好きです」

「あー、あれ美味しいよな」

「小山さんは?晩酌します?」

「週に何回かは飲むかな。でも俺も強いわけじゃないよ」


小山さんとふたり、バーで他愛もない話をする。

なぜ小山さんとふたりきりなのかと言うと、先程までオフィスのメンバーで新年会をしていて、いまが二次会だから。

ちなみに逸生さんは急遽会食が入ったため、終わってから合流することになった。そして数十分前までは古布鳥さんイノッチさん百合子さんもここにいたのだけれど、お酒が入ったイノッチさんと百合子さんがバトルを始めたため、古布鳥さんが連れて帰ってしまった。


逸生さんが来るまでとりあえず飲んで待っていようと、カクテルを少しずつ口に運びながら話をしているわけだけど。小山さんはオフィスメンバーの中でもお兄さん的存在だからか、不思議と居心地がよく、お酒が入っているのもあって次から次へと話が止まらなかった。


「…小山さん」

「うん?」

「小山さんは、専務の政略結婚の話がいまどうなっているか知ってたりします?」


ぽろっと無意識に出た言葉に、小山さんは一瞬驚いた顔を見せた。けれどすぐに首を横に振ると「全然。俺にも情報入ってこないよ」と苦笑しながらグラスを煽った。


「確か1ヶ月後くらいに役員会議入ってるだろ?」

「…はい」

「多分そこで本格的に話が進んでいくんじゃないかとは思う」


──1ヶ月。それは長いようで、私にとってはあまりにも短い期間だった。

< 208 / 324 >

この作品をシェア

pagetop