転生(未遂)秘書は恋人も兼任いたします


もうそろそろだと分かっていたことなのにやっぱり気持ちが沈んでしまう。お酒を飲んでしまったせいか、尚更平静を装うのが難しい。

それでもなんとか平常心を保ちつつ、カクテルの入ったグラスに視線を落とす。


「小山さん的には、誰と結婚すると思いますか」

「うーん、見た目では目黒さんが合ってる気がするけど、性格で言えば松陰寺さん。でも色々なことをひっくるめると、白鳥さんも怪しいな」

「色々なこと…って、専務が白鳥さんのお兄さんに暴力を振るった事件のことですか?」

「え、岬さんその話知ってたんだ」

「はい、少し前に白鳥さんがお連れの方とコソコソ話しているのを聞いてしまいました」


あの日のことを思い出すと、未だ胸が張り裂けそうになる。あれからその話題に一度も触れていないけれど、私の中で“あの人とだけは結婚してほしくない”という気持ちは変わっていない。


「あの話は本当なんですかね。私はどうしても専務がそういことをすると思えなくて」

「確かに最近の逸を見てたらそう思うだろけど、殴ったのは本当の話らしい」

「……」


小山さんなら否定してくれるんじゃないかと、心のどこかで期待していた。それなのに、迷うこと首を縦に振った彼を見て、ズキリと胸が痛んだ。

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