転生(未遂)秘書は恋人も兼任いたします

「でも、聞いた話によると白鳥兄が逸を煽ったらしいよ」

「…え?」

「あの兄もまあまあ問題児だったみたいだし、その頃は九条と白鳥はそんなに親交もなくて、むしろ白鳥が九条を目の敵にしてたって噂もある。そんな中、白鳥兄がその頃社長だった逸の祖父のことを馬鹿にしてきたらしくて。目撃者曰く、それを聞いた逸がブチ切れたって…」


やっぱり思った通りだった。白鳥一家は腐った心の持ち主しかいない。九条側に問題が起きるよう、逸生さんを煽ったに違いない。

その頃から逸生さんが会長を慕っていたのを、白鳥側も知っていたんだ。それでわざと…


「…信じられない。どこまでクズなの」

「まぁこれも噂でしかないんだけどな。俺はその場にいたわけじゃないし、逸はその件について一切口を割らないから。でもそれも小学生の時の話だし、ガキの喧嘩なんてよくあることじゃん。それを何年も引きずってる白鳥も、なかなかしつこいというかなんというか…」


しつこいのは、あのバサバサの睫毛だけにしてくれたらいいのに。

逸生さんは白鳥さんを見る度にその事件のことを思い出すのだろうか。結婚なんてしたら、それこそその呪縛から逃げられなくなってしまう。


「ますます嫌いになりました」

「はは、だよな。まぁ逸は何もなく殴りかかるような男じゃないよ。白鳥兄に限らず、毎日のように喧嘩ふっかけられてはいたけど」


眉を下げながら困ったように笑う小山さんは、きっとそうやって、ずっと近くで逸生さんを見てきたんだろうな。

それが嬉しくもあり、少し羨ましく感じた。

< 210 / 324 >

この作品をシェア

pagetop