転生(未遂)秘書は恋人も兼任いたします
「九条さんはムチとか縄と持ってきて、これでお仕置して、なんて言わないですよね」
「え、なにそれ。どんなプレイ」
私の真面目な質問に対し、はは、と声を上げて笑う九条さん。そして「やっぱ紗良はおもしれーわ」とお決まりの言葉を放つと、ずいっと私の前に右手を差し出してきた。
「もうこれは、交渉成立ってことでいいよな?」
「……」
その手を取ったのは、本当に無意識。九条さんは私の手を強く握り返すと「1年間よろしく」と破顔した。
「ちなみに俺は、縛られるより縛りたいタイプかな」
「(…最高)」
九条さんの手を取ったのは、果たして正解だったのか。
「とりあえずそのおデコ冷やすか」
「…はい」
この時の私は、これからどんな未来が待ち受けているのか想像すら出来ていなかった。