転生(未遂)秘書は恋人も兼任いたします
てか、“狡い”は、こっちの台詞なんだけど。
「気持ちがなくても…って、それはお前の方だろ」
すーすーと、規則正しい寝息を立てながら眠っている紗良の頬を、そっと指先でなぞる。
その陶器のようになめらかな肌に、吸い寄せられるように思わずキスを落とせば、紗良は「んんっ」と眉を寄せて俺に背を向けた。
「好きだから嫉妬するに決まってんのに。てか、そっちこそ他に好きな人がいるのに、なんでこんな可愛いことするかな」
華奢な身体に、布団を掛けながらぽつりと呟く。
「…離れたくねえな」
無意識に出た言葉は、確実に俺の本音だった。
その心の声に蓋をするように、隣で眠る紗良を後ろからそっと抱きしめた。