転生(未遂)秘書は恋人も兼任いたします
15.兄の胸中
「いった…」
目覚めた時から頭痛が酷い。胃もムカムカする。これは明らかに二日酔いだ。
昨夜、大量に飲んだつもりはないけれど酔っ払った自覚はある。私の記憶では、小山さんとふたりきりになったあたりから酔いが回り始めた。
“確か1ヶ月後くらいに役員会議入ってるだろ?多分そこで本格的に話が進んでいくんじゃないかとは思う”
小山さんのあの言葉を聞いてから、自分の中で何かが崩れていく感じがした。
逸生さんが婚約することは分かっていたこと。覚悟も出来ている。それなのに、改めて現実を突きつけられると、胸が苦しくて仕方がなかった。
そこからお酒に頼ってしまったせいか、逸生さんが合流してからの記憶は曖昧。正直どうやってマンションに戻ったのかも覚えていない。
今朝の逸生さんはいつも通りだったけど…私、変なこと口走ってないよね?バーでいっくんって呼んでしまったのは何となく覚えているけれど、彼がどんな反応をしたのかさえも忘れてしまった。
でも普通に考えて、かなり失礼なことをしてしまったと思う。馴れ馴れしくあだ名で呼んだだけでなく、酔って記憶をなくしたのだから。
あとできちんと謝罪しよう。今朝、逸生さんは急ぎの用があるからと、先にマンションを出てしまったからゆっくり話が出来なかったし。
…それにしても、急いでいたにも関わらず、一番に私の体調を気遣ってくれた今朝の逸生さん。優しくて思わずきゅんとしてしまった。