転生(未遂)秘書は恋人も兼任いたします

「もう知ってると思うけど、マジで親父は堅物人間だから。真面目な分、余裕がなかったんだと思う。それなのに俺が悪さばっかするから、そりゃあ見放されるよなって話」

「そんなこと…逸生さんは何も悪くないと思います」

「まぁ、確かに俺もその時は必死だった。でも迷惑かけてきたことには変わりないから。兄貴も親にプレッシャー与えられて苦しんでたのは何となく気付いてたし。それなのに弟は自由で、肩身が狭かったと思う。だから、何だかんだ見捨てずにこの会社に俺を置いてくれてることに、俺は感謝してるよ」


やっぱり逸生さんは、心が優しい人だと思った。

誰よりもたくさん傷付いてきたはずなのに、社長や副社長の苦労にまで気付いていた。私は今日、副社長から直接あんな言葉を掛けられなかったら、彼を完全に悪として見ていたのに。

本当に、どれだけ優しい人なんだろう。また惚れ直してしまう。

もしかすると社長や副社長も、逸生さんのこういう優しさに気付いているのかもしれない。逸生さんが会社を大事にしているのも、絶対に伝わっていると思うし。

だからいつか逸生さん達も、私の父親と祖父のように和解出来る日がくるのかな。笑って話せるようになる未来は、そう遠くないのかも。

それこそ、会社のために政略結婚をすれば、ぐっと距離が縮まるに違いない。

こうやって逸生さんは、これからもどんどん活躍していくのだと思う。会長の期待に応えて、九条を大きくしていく人なんだ。

副社長の言った通り、私とは住む世界が違う。

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