転生(未遂)秘書は恋人も兼任いたします

逸生さんの少しSっけのある発言にきゅんとしたこともあったけど。

それよりも、自由な人に見えて実は誠実で、私の全てを受け入れてくれる包容力があって、一見ふざけているようで実は仕事に対しても真面目で、クライアントに対する接し方や、たくさんの人に慕われている人柄も、苦労や努力を見せつけない謙虚さも、全てが魅力的で、そんな逸生さんに、気付いた時には恋をしていた。


あの日、転生しようとした私に声を掛けてきてくれたのが逸生さんでよかった。逸生さんを好きになれて、そばにいられて、本当によかった。


「…今日の紗良、なんかちょっと変じゃね?さっきから俺のことストレートに褒めすぎというか…」

「すみません、気味が悪いですよね。でも、伝えたいことは今のうちに全て伝えることにしたんです。後悔したくはないので」


つらつらと紡ぐ私に、逸生さんは怪訝な目を向けてくる。でも私は、頭を打っておかしくなった訳でも何でもない。今日トイレに篭っていた時に、たくさん考えて出した答えがこれだった。

小山さんの言葉にも背中を押された。このまま離ればなれになったら、きっと後悔すると思った。

だから私は、今日全てを逸生さんに伝える覚悟を決めていた。


「…なぁ、それってどういう…」

「だから、もう包み隠さず全て話しますね。実は私、逸生さんの人柄にずっと惚れてたんです」

「……え?」


不思議と気持ちは落ち着いていた。もう迷いはなかった。

微かに揺れた瞳を真っ直ぐ見据えた私は、逸生さんの手を強く握りしめたままゆっくりと口を開いた。


「逸生さん…好きです」


こぼれ落ちるように出た言葉が、静かな部屋に小さく響いた。

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