転生(未遂)秘書は恋人も兼任いたします

沈黙が流れる。逸生さんは相当困惑しているのか、綺麗な形をした目を大きく見開いたまま固まっている。

何となく、こういう反応になることは想像出来ていたけれど、静寂な時間が不安な気持ちを加速させる。

あまりにも唐突だし、困らせてしまうことも分かってた。だけどやっぱり、後悔しないためにも伝えずにはいられなかった。


「以前私に好きな人がいるって言ったの、覚えてますか?実はあれ、逸生さんのことだったんです」

「……」

「最初は少し強引で、変わった人だなって思ってました。でも同じ時間を過ごしていくうちに、逸生さんの仕事に対する姿勢とか人柄とかに、いつの間にか恋をしてました」


声にした途端、色々なものが込み上げてきて涙が溢れそうになる。それを悟られないよう平静を装うけれど、声が震えてしまう。


「好きになったらダメな人だって、分かってたんですけど…やっぱダメですね。一緒にいればいるほど、惹かれてく。追い討ちをかけるように、今の素敵な話を聞いたから…この気持ちを伝えずにはいられませんでした」

「……」

「自分でも驚くくらい、好きが溢れるんですよね。こんな気持ちになった人は、逸生さんが初めてです」


矢継ぎ早に喋り続ける私に、未だ困惑している彼は「紗良が俺を?ほんとに?」と小さく零す。動揺を隠しきれていない彼に「本当ですよ」と返すと、彼はまた目を大きくして固まってしまった。


「…それで、逸生さんに最後にひとつお願いがあるんですけど」


最後(・・)なんて、自分で口にするほど苦しいものはない。けれどもうすぐ、逸生さんは他の人と結ばれてしまうから。だから最後に、ひとつだけ許してほしい我儘がある。


「私のこと、抱いてくれませんか?」


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