転生(未遂)秘書は恋人も兼任いたします
でも、本当にあの子が逸生さんなのかな。正直、その子の顔はほとんど覚えていないけれど、目付きがかなり悪かったという薄らとした記憶が残っている。
だからあまり逸生さんと結びつかないけれど、昔の逸生さんはかなり荒れていたというし、確か稲葉さんが“いつもムスッとしてて、こわい顔でお饅頭を食べてた”と言っていた。
となると、やっぱり逸生さん説が濃厚だ。
「あの子は逸生さんだったのですね…」
「なんか複雑な気持ちだけど、もしかしたらそうかもしれないな」
そっか、紗良も覚えててくれたんだ。逸生さんはそう言うと、私の頭をくしゃくしゃと撫でながら破顔する。
「なかなかパンチの強い男の子だったので記憶に残っています。でも、なんで私はあの公園にいたんだろう…」
「何でだろうな。まぁ親父さんらしき人と一緒だったから、普通に遊びに来てたんだろ」
「そうかもしれないですね。ていうか、逸生さんは、その時からずっと私を好きでいてくれてたんですか?」
「うん…ずっと忘れられなかった」
「凄いですね…。その時の私、短時間でどうやって逸生さんの心を掴んだのでしょう」
「なんか色んな意味で衝撃がデカかった記憶がある。今までに会ったことのない人種っていうか、自分でも驚くほど、その日から紗良のことしか考えられなくなって…」
照れくさそうに、でも嬉しそうに微笑む彼を見て、私まで嬉しくなる。心臓が波打って、身体に熱を帯びていく。
まさか逸生さんが、その頃からずっと私を見てくれていたなんて知らなかった。彼の一途なところに、また惹かれてしまった。