転生(未遂)秘書は恋人も兼任いたします
「あれ、でも逸生さん、再会した時は“今まで誰も好きになったことがない”って仰ってましたよね」
「だって、そう言わないと紗良が頷いてくれないと思ったから。ずっと片思いしてた人に奇跡的に再会して、何としてでもそばにいたかった…俺も必死だったんだよ」
「…そんなに熱く語られると、何だか照れくさいですね。でも、よく私って分かりましたね。私の顔、昔とあまり変わってないですか?」
「変わってないっていうか、紗良ほど綺麗な人ってなかなかいないから。どっかで見たことある顔だなって思ってたら、お前が“さら”って名乗ったから、そこで確信した」
「私の名前、知ってたんですか?」
「親父さんが呼んでんの聞いたから。そっから俺の頭の中が“さら”でいっぱいになった」
次から次へと甘い台詞を吐く逸生さんと、至近距離で視線が絡まる。
「そんなに私のこと…嬉しいです。まだちょっと信じられないけど」
「何でだよ。多分紗良が思ってるより何倍も好きだよ」
吸い込まれそうなほど熱い視線と、逸生さんの口から出てるとは思えないほど甘い言葉。
恥ずかしさのあまり思わず目を閉じれば、それが合図かのようにそっと唇が重なった。
いつも通り、ただ触れ合うだけのキス。それなのに、思いが通じあったからか、いつものキスより何倍も心地よく感じた。
「…逸生さん」
「うん?」
「あの…さっきの返事、聞いてもいいですか?」
「返事…?」
「……抱いて、欲しいです」
羞恥を覚えつつも、我慢の限界だった。逸生さんの熱に触れ、身体が疼いているのが分かる。
視線を落とし、逸生さんの服をきゅっと握る。すると、上から小さな溜息が落とされて、思わず肩がビクリと跳ねた。
「…だから、何で先に言うかな」
こっち向いて。耳元で囁いた逸生さんの手が、私の後頭部に回った。