転生(未遂)秘書は恋人も兼任いたします
私を組み敷くように体勢を変えた逸生さんは、唇を重ねたまま私の服の中に手を滑り込ませる。
その手は腰やお腹を撫でるように上へ伝っていく。逸生さんからプレゼントされたルームウェアが捲し上げられて、徐々に自分の身体が露になる。その恥ずかしさに、思わず身を捩った。
しかも私の肌に触れる手つきがやけに官能的で、彼の指先が身体をなぞる度に身体がぴくんと反応してしまう。そうしながらもキスをやめない逸生さんは、舌先で器用に歯列をなぞるから、それだけで頭が真っ白になりかけて自然と甘い声が漏れた。
「…逸生、さん…」
「ん?」
誘ったのは自分なのに、いざこうなると羞恥のあまり顔が熱くなる。
息付く暇もなく降り注ぐキスも息苦しくて、勝手に出てしまう声も自分のものじゃないみたいで怖くなって、唇が離れた瞬間を狙って慌てて声をかければ、逸生さんはすぐに動きを止めた。
「どうした?」
優しい声音で囁きながら、空いた方の手で私の頭を撫でる。その手のぬくもりに少し落ち着きを取り戻した私は、ぎゅっと瞑っていた目をゆっくりと開けた。
ぼやける視界の先で、優しく目を細める彼と視線が重なる。「嫌だった?」と落ちてきた声は、少し不安げだった。
「ごめんなさい、全然嫌じゃないです。ちょっと、緊張しちゃって…」
「緊張してんだ。ほんと紗良は顔に出ないな。ちなみに俺もかなり緊張してる」
「逸生さんも?」
「当たり前だろ。ずっと好きだった紗良とやっと繋がれるのに、余裕なんか持てるわけねえよ」
“繋がる”
叶わない恋だと思っていた私には、その言葉がやけに胸にじんときた。気持ちも身体も、全てがひとつになることなんてこの先一生ないと思っていたから、余計に。
──私、いますごく幸せだ。