転生(未遂)秘書は恋人も兼任いたします
17.私の願い
「ごめん、体大丈夫?」
「はい、なんとか…」
何度も求められた身体は限界を超えていた。逸生さんが手伝ってくれたお陰で服は着れたけど、もう自分ひとりの力では動けないほど疲れ果てている。
そのため、余韻に浸るように彼の腕の中に収まっているけれど、逸生さんの体温が心地よくて気を抜けば一瞬で意識を手放しそう。
だけど、私は今日中にもうひとつしなければいけないことが残っている。だからこのまま眠るわけにはいかなくて、うとうとしながらも縋るように彼の背中に手を回した。
「紗良、」
好きだよ。耳元で囁かれ、こめかみにキスが落ちてくる。それだけでぴくんと身体が跳ねて、あっという間に熱を取り戻してしまう。
散々身体を重ねたのに、まだ逸生さんが足りないなんて。あと何度求め合えば、私の身体は満足するのだろう。
「…ねぇ逸生さん。私、顔以外にいいところありますか?」
「え?」
「何年も想ってもらえるほど、いい女じゃないのになって思って。愛想もないし、友達も少ないし」
熱を帯びた身体を落ち着かせるため、何気無い質問を投げかける。すると、逸生さんはきょとんとした顔で私を見下ろし「何言ってんの。いっぱいあるけど」とさらりと放った。
「…いっぱいですか?」
「うん。困っている人を放っておけなくて、思いやりがあるとことか、人に媚びないというか、誰に対しても平等なところや、落ち着いて周りを見てるところもいい。あと料理も上手だし、たまに見せるぶっ飛んだ言動も好き」
「ぶっ飛んだとは」
「例えば、転生しようとするとことか?」
「……」
何も言い返せない私を見て、クスクスと笑う逸生さん。「とにかく全部好き」と付け加えると、最後にボソッと「何で早くこの気持ちを伝えなかったんだろうな」と呟いた。