転生(未遂)秘書は恋人も兼任いたします
ていうか、さっそく一緒に寝るってことは…そういうことだよね。まだ彼のこと何も知らないけれど、身体の相性から知るのも悪くないのかも。
九条さん、なかなか経験豊富そうだな。どんなプレイを好むのだろう。昨日の会話からして、ドMではないことは確かだけれど…むしろ調教とかされたらどうする私。…ちょっと、興味あるかも。
「紗良」
「え、あ、はい」
ふいに声をかけられ、緩みそうになっていた口元を慌てて隠した。
危ない。いくら恋人になったと言っても、これはただの遊びみたいなもの。笑顔は封じなくちゃ。
「…なに、その顔」
笑わないことを意識し過ぎたせいか、無意識に眉間に皺が寄っていた。そんな私の顔を見た九条さんは、怪訝な目を向けてくる。
「恋人にも笑顔見せないんだ?」
「勿論です。本気で惚れられると困るので」
「それは偽物の恋人だから?」
「まぁ、そんなところです」
「…ふうん」
探るような視線が痛い。思わず目を逸らせば、九条さんは続けて口を開く。
「なんか、あからさまにツンツンされると、ちょっと泣かせたくなるよな」
「……」
な、何ですかそのドS的発言。
やだ、なんか胸が痛い。苦しい。
そういうの…嫌いじゃないです。