転生(未遂)秘書は恋人も兼任いたします
18.幸せの形
「岬ちゃんと…今日でお別れだなんて…わたし…ほんと…無理いいいいいい!」
急に大きな声を上げて膝から崩れ落ちる百合子さんを見て、思わず目を見張った。驚きのあまり固まる私を余所に、すかさず駆け寄ったイノッチさんが膝をついて百合子さんの背中を撫でる。
「大丈夫、百合子には俺がついてるから」
「イノッチじゃダメだよ…岬ちゃんは私のお気に入り断トツ1位だったんだから…」
まさかの言葉に傷ついているイノッチはとりあえず置いといて。
まだ百合子さんのお気に入りに入っているだけでなく、いつの間にか1位になっていたことに驚きつつも、私の退職にショックを受けてくれている百合子さんが、愛しく思えた。
「百合子さん、短い間でしたがお世話になりました。百合子さんの気さくな優しさにとても救われました。イノッチさんとご結婚される時は、必ず連絡くださいね」
「ゔぅ…結婚する時だけじゃなくて、毎日ラインする」
「それはちょっと…」
「お願い!既読スルーでもいいから!岬ちゃんと繋がってるっていう証が欲しいの!」
いや、さすがに毎日は勘弁して欲しい。
けれど、こうして辞めた後も関係を続けようとしてくれることは、友達がいない私にとっては素直に嬉しかった。