転生(未遂)秘書は恋人も兼任いたします
合格、ということは、もしかしてこれが昨日言っていた“面接”だったのだろうか。
満足げに微笑んだ逸生さんは「ここでは必ずそう呼ぶこと」と付け加えると、スーツを腕に掛けたまま別の部屋に入っていってしまった。
私、この人に口で勝てる気がしない。いつの間にか話が進んでいっちゃう。
やっぱり彼には、不思議な力がある。
「…変な人」
変な男だけど、彼は恋人。きちんとお付き合いするのは、逸生さんが初めてだ。その初めての相手がこんなハイスペックなイケメン変人って、なんか凄い。
この人ならお父さんに言っても許してもらえるかな。…いや、1年だけお付き合いしますなんか伝えたら、それこそ実家に連れ戻されそう。
それにしても、1年だけ恋人になれなんて、逸生さんはおかしな人だ。私みたいな人間、顔以外何もいいところなんてないのに。
「…何で私だったんだろ」
窓から見える綺麗な夜景を眺めながら、ぽつりと呟いた。
1年後、この景色が見られなくなるのかと思うと、何だか少し寂しく感じた。