転生(未遂)秘書は恋人も兼任いたします
「お前がの気持ちが中途半端じゃないのは伝わった。だけど、感情だけで行動するのはあまりおすすめしないな。誰にでも立ち向かっていけるところがお前のいいところでもあるけど、なんでもひとりで解決しようとするのは違うぞ。困ったことがあれば相談しなさいと、私はいつもお前にそう言っているはずなんだけどな」
「……」
「お前が家族思いなことを、私はよく知っている。縁を切るなんて、簡単に口にするんじゃないよ。お前が責められるところを、私はもう見たくないからね」
じいちゃんは、一体いつから俺達の会話を聞いていたのだろう。
この歳になって、80を超えた爺さんに叱られているけれど。じいちゃんの言葉はどこかあたたかく、俺に寄り添ってくれているのが分かった。
“縁を切る”
じいちゃんがあのタイミングで部屋に入って来なければ、俺はその言葉を最後まで口にしていた。
せっかくじいちゃんがギリギリで繋いでくれていた糸を、簡単に切り離そうとしていたんだ。
「……ごめん」
無意識に出た謝罪の言葉に、じいちゃんは目を細めて頷く。そんな俺達の様子を、親父達はただ黙って見ていた。
「よし、とりあえず一旦この話は置いておこうか。わしは平和主義だから喧嘩は嫌いだ。目の前で揉められたら寿命が縮まる」
そう切り出したじいちゃんは、突然スツールから立ち上がると「逸生に頼みたいことがあるんだ」と、俺の目の前で足を止めた。