転生(未遂)秘書は恋人も兼任いたします

『お見合いするってことは…専務のことは本気で忘れるつもりなんですね』

「はい…父と約束もしていましたしね。春になったらお見合いをするって。それに元々、私は父が認めてくれた相手としかお付き合いすることも出来ないので」

『今どきそんな話があるんですか？岬さんの親父さん、過保護なんですね。ちなみにですけど、その親父さんが求める条件って』

「坂本龍馬みたいな人です」
『それ俺じゃないっすか』
「違うと思います」
『ほんと躊躇ねえな』


少しくらい夢を見させてくださいよ。すかさずツッコミを入れた彼は『まぁ岬さんのそういうハッキリ言うところに、毎回痺れてるんすけど』と安定のドM発言を独り言のように零した。


『でも俺は、やっぱり岬さんの隣は専務がいいと思ってます』

「…さっき告白してきたくせに」

『専務がダメなら俺にしてってことっすよ。でも、岬さんを本当に幸せに出来んのは専務しかいないと思うんです。反対に、専務にも岬さんしかいないと思ってます。岬さんを見る専務の目は、絶対に本気だったから。それなのに、お互いこのまま親の言いなりになるのはおかしくないですか？』

「……」

『専務、出張から帰ってきてから驚くほど元気ないんですよ。誰が見ても分かるくらいには』

「え…」


私が聞けなかったことを不意打ちでサラッとに口にするから、思わず息を呑んだ。そんな私を余所に続けて口を開いた彼は『オフィスのみんなは病気を疑ってるみたいですけど…俺は岬さんがいなくなったからだと思ってます』とハッキリ紡いだ。