転生(未遂)秘書は恋人も兼任いたします
その後も何度も身体を重ね、気付けば日付が変わっていた。
無駄に広いベッドの上で、無駄に距離を縮める私達。彼の腕枕は心地よく、ほぼ体力が0の私は油断すればすぐに意識が途切れそうだった。
「なぁ紗良」
額にキスを落としながら問いかけてくる逸生さんの体温を感じながら「はい」と返事をすれば、彼はすっかり乱れてしまった私の髪を丁寧に撫でながら口を開いた。
「また、俺の秘書をしてくれる?」
「え…?」
「あのオフィスに戻っておいで」
彼の唐突な提案に、すぐに浮かんだのは百合子さんや古布鳥さんの顔だった。
「…いいんですか?」
「うん、紗良がいいなら。別に無理して働かなくたっていいんだけど、俺が少しでも紗良のそばにいたいから。それに百合子さん達も紗良がいなくなってかなり落ち込んでたから、きっと喜ぶと思うし」
「嬉しい…私も皆さんに会いたいです」
あんなにも私を受け入れてくれる環境は今までになかった。そんな心の優しい人達に、最後まで笑顔を向けられなかったことも後悔していた。
出来ることなら戻りたい。あの場所で、時にわいわいしながら、逸生さんを支えたい。
「…今度は私も一緒に、皆さんとたくさん笑いたいです」
「うん、そうだな」
そう零してすぐに、ハッとした表情をした逸生さん。再び私の額にキスを落とすと「でもあの男の前では笑顔禁止な」と小さく呟いた。
「あの男…?」
「いや、なんでもない」
小さく溜息をついた彼は、今度はこめかみにキスをする。それが頬になり、最後には唇に到達したから、慌てて制止した。
「逸生さん、さすがにもう無理ですよ」
「…ごめん、あいつを思い出したらつい…」
いくら疲れていても、逸生さんに触れられると自然と反応してしまう。けれどこれ以上はダメだと彼の口に手を当てると、しゅんと眉を下げた逸生さんの表情がなんだか可愛くて、思わず笑みが零れた。
「これからはずっと一緒にいられるんですもんね。毎日、こうして寄り添って寝ましょうね」
うん、と素直に頷いた逸生さんは「はぁ、好きだ」と溜息混じりに愛を呟く。そんな彼が愛しくて、耐えきれず今度は私が唇を奪った。