転生(未遂)秘書は恋人も兼任いたします


「また会社に戻るって言っても、紗良は俺の隣にいるだけでいいからな」

「嫌ですよ。きちんと働かせてください」

「笑顔振りまき過ぎるのはやめろよ。目が合った奴みんな紗良に惚れるから」

「父みたいなこと言いますね。でも心配しなくても、例え惚れられても私は逸生さんしか見ていませんから大丈夫ですよ」

「俺が目を離した隙に転生しようとすんのも禁止だからな」

「ふふ、しませんよ。逸生さんのいない世界になんて、いきたくないですし」

「あ~いちいち可愛い」


まるで人形を扱うようにぎゅうっと力を込めて抱きしめられて、息苦しい。でもそれすらも幸せに感じてしまうから、彼の体温は私を落ち着かせる不思議な力があるようだ。


「あと木登りも禁止な。もし気付かないうちにお腹に子供がいても危ないし。てか、自分で解決しようとせずに何かあったらすぐ俺を呼ぶこと」

「子供って…ちょっと気が早過ぎませんか」

「紗良に似たら死ぬほど可愛いだろうなー…やば」

「逸生さんに似ても可愛くなると思いますよ」


目を合わせて微笑む。逸生さんとの未来は、想像するだけで楽しい。


「そういえば私、オフィスの皆さんから退職祝いのプレゼントをいただいたんです。それなのにこんなに早く戻るのは、少し気が引けますね…」

「そんなこと気にする人なんていないだろ。いい人達ばかりだから大丈夫だよ」


逸生さんの周りは、本当にいい人たちで溢れている。それはきっと、彼がお人好しで、優しい心の持ち主だから自然とそうい人が集まるのだと思う。

そして私は、そんな彼に一生寄り添っていたい。






「てか退職祝いのプレゼントは何が入ってた?」
「えっとですね、まだ使ってはいませんが、セクシーな下着にガーターベルト」
「え」
「あとはエッチな気分になる香水に、バイアグ…」
「待て待て待て待て。一体誰がそんな」
「古布鳥さんチョイスだと仰ってました」
「いやマジで、そんなん使われたら俺やばいんだけど。だからって他で使われても困るけど」
「やばい…とは」
「多分歯止めがきかなくなって、紗良のこと泣かせそう(何言ってんだ俺)」
「……(やだ、ゾクゾクしちゃった)」








転生(未遂)秘書は、恋人も兼任いたします fin.


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