転生(未遂)秘書は恋人も兼任いたします
「あと今ここにいるのは、端から総務の井上さんと百合子さん、経理の古布鳥さんね」
小山さんが簡単に説明すると、1番端の井上と呼ばれた男の人が一歩前に出て口を開いた。
「趣味は彼女と遊ぶこと、特技は彼女を守ること、三度の飯より彼女が好きな井上でーす。ちなみに俺の彼女は、隣にいる百合子。今日も美しいね?そんな感じでよろしくお願いしまーす」
また物凄いキャラが出てきたな。と、目が点になった。
けれど何とか「よろしくお願いします」と頭を下げれば、見た目はごく普通の井上さんは「次は百合子ね」と、百合子さんの肩をぽんっと叩く。
バトンタッチされた百合子さんは、うっとりした目で井上さんを一瞥してから、私を捉える。
すると、色白で華奢で、少しメルヘンチックな印象の彼女が突然「うふ」とウインクを飛ばしてくるから、無意識に一歩後ずさった。
……喋る前から分かる。この人もかなりヤバそう。
「可愛いものがだーい好き、花畑 百合子です。イノッチ命!あ、ダジャレじゃないよ。岬さん、見た感じとっても可愛いわね?既にお気に入りに登録されました。よろしくお願いしまーす」
「……こちらこそ」
この部署、普通の人はいないのか?
逸生さんもなかなかの曲者だと思っていたけれど、このカップルが強烈すぎて思考が停止してしまう。
見たところ、私とそんなに年齢は変わらない気がするけれど…出会ったことのない人種だ。とりあえず、勝手にお気に入り登録するのはやめてほしい。
顔が引き攣りそうになるのを抑えつつ、井上さんと百合子さんを交互に見ていれば、百合子さんの隣に立っていた古布鳥さんが「次は私ね」と口を静かに開いた。