転生(未遂)秘書は恋人も兼任いたします

「実は先日逸に頼まれて、この会社がどんな事業を手がけているかとか、簡単に纏めたものを作っておいたよ」

「え、」

「岬さんの入社は逸の独断で急遽決まったから、この会社のこと何も分からないだろうからーって」


手渡された書類の中には、小山さんが作ったであろう物と、その他に会社のパンフレットも入っていた。

早速パンフレットを捲り、さらっと中を見てみれば、製造業や小売業、飲食業から不動産業まで本当に様々な事業を手がけている事が記載されていた。


「子会社もいっぱいあって大変だと思うけど、ゆっくり覚えていけばいいよ」

「でも秘書なのに、そんなにのんびりしてて大丈夫なんですかね」

「まぁ大体は逸が把握してるし、あいつのそばにいれば自然と覚えられると思うから。秘書って言うと堅苦しく感じるかもしれないけど、相手は逸だから難しく考えなくて大丈夫だよ。困ったことがあれば俺のことも頼ってくれていいし」


他人事だからなのか、軽い口調で話を進める小山さん。まぁ彼もずっと逸生さんの秘書役をしていた訳だから、そんな小山さんが大丈夫というなら、本当に大丈夫なのかもしれないけれど。

それに、まだ不安は残るけど、唯一まともな小山さんがそばにいてくれるなら何とかやっていけそうな気もするし。


それにしても逸生さん、わざわざ小山さんにこの書類を用意するよう頼んでくれていたなんて。ただの変な人だと思っていたけど、少し見直した。

とりあえず今日から手の空いた時間は、この書類を見て九条について学ぼうと思う。



< 39 / 324 >

この作品をシェア

pagetop