転生(未遂)秘書は恋人も兼任いたします
「え!?岬さんって初恋の人!?」
「お前声でけーよクビにするぞ」
紗良と別れたのは1時間ほど前。
初出勤を終えた紗良はかなり疲れた様子だった。そのため、とりあえず彼女をマンションまで送り届け、ついでに着替えを済ませた俺は、部下であり親友でもある小山ととある居酒屋までやって来た。
「なんで先に言わねーんだよ」
「だってまだ確定した訳じゃないから。でも多分、あの子だと思う」
煙草を咥え、紗良のことを思い浮かべながら息を吸う。そして盛大な溜息と共に煙を吐くと、向かいに座る小山は煙たそうに眉を顰めた。
「どういう事?てか岬さんはお前のこと数日前に会ったばっかだって言ってたぞ」
「だよなぁ覚えてねえよなぁ…つら」
ここ数日紗良の様子をうかがって、何となくそうだろうなあとは思ってた。忘れられなかったのは俺だけで、紗良にとっては何の記憶にも残らない時間だったんだろうなって。
分かってたけど、小山に言われるとなんか腹立つ。
「なぁ、それっていつの話?」
「小学生のとき。じいちゃん家の近くの公園でたまたま会った。あの時からめちゃくちゃ可愛かったなぁ」
「…待って、その1度きり?」
「まぁ…うん」
「それが初恋?うそだろ?ピュア過ぎじゃね?お前そんな簡単な男だったわけ?」
「うるせーよクビにするぞ」
俺の初恋をバカにするかのように笑いを堪えている小山を見て、思わずその顔面目掛けて煙草を投げそうになった。マジでイラつく。
言っておくけど、ここ数日理性を保つのに必死過ぎて、かなりストレス溜まってんだよ。