転生(未遂)秘書は恋人も兼任いたします
数日前、ふらふらと散歩をしている時にたまたま出会った転生未遂美女。最初はまじで頭のおかしい女だと思って、声を掛けたことを若干後悔した。
けれど、顔と名前でピンときて、勢いで提案した“秘書兼恋人”。
頷いてくれた時は喜びのあまり興奮してしまったけれど、初恋の子との同居生活は、俺が思い描いていたような甘いものではなかった。
「初恋の子が秘書になってくれたのに、なんでお前はそんなやさぐれてんの」
「色々あんだよ。ちなみに秘書だけじゃなくて、夜は彼女な」
「は?!」
「だから声がでけーよ」
驚きを隠せない小山は、持っていたジョッキを危うく落としそうになる。それを冷めた目で捉える俺には、幸せオーラなんてものは出ていない。
「まって、ちょっと整理させろ。ツッコミどころ多すぎて訳が分かんねえぞ」
俺だって、正直頭が追いついていない。恋人になってもらったのはいいけど、ここからどうすればいいのか分からないから困ってる。
だって俺は、1年後に他の女と結婚するわけで。
しかも紗良は俺に気持ちなんて1ミリもないし、俺に気持ちがあることも向こうは知らない。
なんとか繋ぎとめたくて、咄嗟に秘書兼恋人になれなんて言ったけど。
どうせ1年後には全て終わってしまう。