転生(未遂)秘書は恋人も兼任いたします

見た感じ、俺より年下。この歳って、よく喋るふざけた奴が人気者になるイメージ。

てことはこの女も、俺みたいなクールな金持ちよりひょうきん者の方が心を開けるとか?

だったら──


「内臓がないぞう!」

「………」


───完全にしくった。

心を開くどころかクスリともしない。俺の声が届いていないかのように無反応。


「…おい、今の笑うとこだろ」

「あ、ごめんなさい。私笑わないようにしてるから」


何だそれ。こいつから返ってくる言葉、全て俺の斜め上をいくのは何でだ?てかこの女には心がないのか(人のこと言えないけど)。


「お前みたいなおもんない女、初めてなんだけど」


つい本音が出た。いつもの癖で、冷たく言い放ってしまった。


「(…泣くか?)」


言った瞬間「やべ」と思ったけど、時すでに遅し。

でもこの女が悪いだろ。少しでも興味を持ってもらおうとしてんのに、何もかもが空回りで早くも心が折れたんだから。


「……」


沈黙が続く。女は未だ表情を変えないまま、俺を見据えてくる。


「私もあなたみたいな人、初めてだよ」

「…え?」


そして漸く口を開いたかと思うと、泣くどころか穏やかな声を紡いだ。


「大人も含め、だいたいの人はへらへらしながら近付いてくるから。あなたみたいにハッキリ言う人、初めて」

「……」

「ちょっと嬉しかった。ありがとう」


………は?

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