転生(未遂)秘書は恋人も兼任いたします
「付き合えは言えるのに、好きは言えないことの方が俺は理解出来ないけど」
「…言ったところでだろ」
お前みたいな凡人には分かんねえよ。
1年後、どうせ別れてしまうのに、気持ちを伝える意味なんかあるか?
でも恋人になれば一緒にいられる。その間だけでも、他の男に取られる可能性は低くなる。
俺の我儘で紗良の1年を奪ってしまったことは申し訳ないと思ってる。でも俺は、こうしてそばにいられるだけで十分だ。
「いいんだよ。俺が一方的に思いを寄せてるだけで」
「……」
「ただ、1年後には好きでもない女と結婚するんだから。それまでは好きな人と一緒にいたい」
「…逸」
「でも本当はイチャつきたい。紗良の笑顔が見たい」
思わずぽつりと本音を呟いた俺を見て、小山は小さく溜息をついた。
「一緒にいたい気持ちも分かるけど、その分別れがつらくなるんじゃねえの?」
「……」
そんなこと、言われなくても分かってる。
でもあの日、紗良が頭をぶつけた日。あのまますぐに別れていたら、それこそ後悔していたかもしれない。
別に俺が勝手に紗良を好きなだけ。1年後、傷付くのは俺だけだから、何の問題もないだろ。