転生(未遂)秘書は恋人も兼任いたします
ちなみに婚約者候補は目黒さんを含め3人。この人は“日焼けの目黒さん”でインプットしていた。
写真でもなかなかインパクトがある人だったけど、本物はオーラが違う。何だか圧倒されてしまう。
「まさか専務にお会い出来るなんて思っていなかったから、もう少しオシャレして来ればよかった」
甘い匂いとは反対に、彼女の口調はサバサバしている。けれど、ボディラインがくっきりと出ているタイトなドレスは、女の私でさえ目を奪われるほど色気を感じる。
顔もブスではないし、背も高くてスタイルもいい。逸生さんの隣に立っても、それほど違和感を感じない。
逸生さんにお似合いな相手な気もするけれど、彼はそこまで彼女を良く思っていないのか。先程までのコミュ力を封印したかのように、彼女と距離を取っているのが伝わってきた。
「専務、そちらの方は?」
目黒さんの視線が私に移った。つり目のせいか、睨まれているような感覚に陥り、思わず息を呑む。
「秘書の岬です。先日入社したばかりで…」
「秘書?」
目黒さんの視線が、微かに鋭くなった。それに逸生さんも気付いたのか、彼は私を隠すように1歩前に立つ。
「言っていただければ私がして差し上げたのに」
「まさか。私は結構人使いが荒いので、目黒さんには頼めませんよ」
穏やかな口調で断りを入れる逸生さん。そんな彼に「あら、残念」と呟いた目黒さんの視線が、まだ私に向いているのが分かる。